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東北紀行(19)二本松 「智恵子抄」 、
薬師岳に立つ「本当の空・・、」の標柱
『あどけない話』 高村光太郎 詩集「智恵子抄」より
智恵子は東京に空がないと言ふ、
ほんとの空が見たいと言ふ。
私は驚いて空を見る。
桜若葉の間に在るのは、
切つても切れない
むかしなじみのきれいな空だ。
どんよりけむる地平のぼかしは
うすもも色の朝のしめりだ。
智恵子は遠くを見ながら言ふ。
阿多多羅山の上に
毎日出てゐる青い空が
智恵子のほんとの空だといふ
あどけない空の話である。
『智恵子抄』 唄:コロンビア・ローズ <昭和39(1964)年>
東京の空 灰色の空
ほんとの空を 見たいという
拗ねてあまえた 智恵子
智恵子の声が
ああ 安達太良の山に
今日も聞こえる
「智恵子は東京に空が無いといふ」で始まる高村光太郎・『智恵子抄』の中の「あどけない話」より。
その智恵子は「阿多多羅(あだたら)山の上に毎日出てゐる青い空」が“ほんとの空”だと言う。
智恵子の「東京に空がない」、「ほんとの空が見たい」という言葉に、今なお我々は何かドキリとさせられる。
因みに昨今、大気汚染や環境問題が取りざたされて久しいが、小生の知る昭和30年から40年にかけての東京の空は、郊外に出て眺めるとスモッグ(smoke・煙と fog・霧とからの合成された語であり、大都市や工業地帯にしばしば発生する塵埃や煤煙の粒子が凝結となった霧状のもので、自然の霧とは関係ない)や煤煙で真っ黒だったのである。
智恵子の実家と安達太良山の頂上を結ぶ東西の線の間に広がる安達太良高原であるが、智恵子と光太郎が安達太良山や同系の「薬師岳」に登ったという記録は無い。
次回、岳温泉「陽日の郷・あづま館」
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