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東北紀行(9)いわき湯本 「石城地方」 、
古代・石城地方は、蝦夷(えみし)の勢力と大和朝廷の勢力が拮抗していた地域であった。
小生の実家は、昭和の初期までは福島県石城郡湯本町であった。
石城郡は、1966年(昭和41年)に市域、郡域が全て合併し、今は平仮名の「いわき市」になって消滅している。
「石城」は「いしき」ではなく「いわき」である。
「いわき」は、古事記、日本書紀、風土記に表れる古来の和字は「伊波岐」とも記されていたらしい。
古代から中世にかけて「いわき」は、磐城とか岩城とも書くし、岩木とも書くことがあったらしいが、本来は石城である。
「続日本紀」(平安初期の歴史書)には陸奥国石城郡と書かれているし、それが昭和の年代頃までは福島県石城郡・・、であった。
古代、大和朝廷の北への開拓は、「日本武尊」の東征では相模国から安房国、常陸国あたりの道筋とされているが、その後も石城から、次第々々に北に向うのである。
古代・石城地方は、蝦夷(えみし)の勢力と大和朝廷の勢力が拮抗していた地域であり、やがて、東征後は大和朝廷の傘下に治まり防衛前線基地となったとされてる。
所謂、大石を並べて城塞化したのが石の城・「石城」であり、古代の築城施設であった名残りが石城となったのだろう、と唱える先生方もいるようである。
石城地方は、古くからは関東圏に内包され、東北地方ではもっとも早く開発されて、既に大和朝廷の息がかかった地域でもあった。(元々は常陸の国の一部、そしてその後は隣国であったことも影響している)
弥生文化といわれる生活様式も鉄器、稲作などが導入されたのも比較的早く、そして海の幸・山の幸を含めると、石城地方がある時期、東北地方でもっとも豊かであったらしい。
季節的にも普通云われる東北のイメージとは異なり、雪などはめったに降らない温暖な地で、東北の「湘南」とも言われている。
東北南部は、蝦夷を含めた旧態の豪族たちが、新勢力とされる朝廷を倒そうと東国の兵を動員して京(平城京)へ向かおうとした地域とされている。
だが、日本武尊の東征(東国の蝦夷遠征)や平安初期の「坂上田村麻呂」により遮断されるという動乱も起きている。
石城地方は、それらの旧態勢力と新規勢力の抑えの拠点であり、この地に石城軍団が置かれていて、石城の大領(たいりょう:平安初期における郡の長官のこと・陸奥国磐城郡の大領)・磐城雄公が配され、天皇から從五位下という官位まで受けている、という記録もあるようである。
大和朝廷の東北進出は、はじめ武力が主であったが経営的には文化の両面からも行なわれたであろうといわれ、その文化の面では特に「宗教」に力を入れたのではないかと思われるのである。
飛鳥時代の初期に大陸から「仏教」が伝来して以来(538年)、変遷を経ながらも中央官人に認められ、仏法興隆の詔が出されるまでに到る。
後に、布教活動によって全国に伝播することになるが、石城は仏教教化の重要な拠点であったのではないかとも言われ、その中の一人に「徳一」という名僧がいたことは史実でも明らかにされている。
「徳一」(とくいつ)は、奈良時代から平安時代前期にかけての法相宗(ほっそうしゅう)の僧で、父は朝廷の一員である「藤原仲麻呂」で、徳一はその十一男と伝えられている。
初め東大寺で法相教学を学んだとされ20歳頃に東国へ下った。
新興宗教の空海とも相容れず、最澄との間で一大仏教論争である「三一権実諍論」(さんいちごんじつそうろん)を展開したことは有名である。
この間、陸奥国会津、常陸国筑波山など陸奥南部から常陸国にかけて多くの寺院を建立すると共に、民衆布教を行い「徳一菩薩」とも称された。
次回は高僧・「徳一と長谷寺」
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